おかしなほしのはなし

とっ散らかっている。

イボと西村賢太の話

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今日は皮膚科へ行った。

耳の付け根辺りに直径3ミリほどの小さなイボができて鬱陶しくて堪らなかった。以前にも同じ場所に同じようなイボができたことがある。これがまたイボと呼んでみるにも酷く煮え切らない、とても中途半端なフォルムをした突起なのだ。暇を持て余している方がいたら、「親指にできたささくれ」と「水晶クラスター」、この二つの間に生まれた子供を想像してみて欲しい。ぼくは例え話が下手だ。

 

午後の診察が始まる15分ほど前に病院へ。すでに待合室は満席で、立ったまま名前が呼ばれるのを待っている人までいる。病院には待ち時間はつきものだと観念し、受付で診察券と保険証を渡して、部屋の隅へ移りおもむろに持参した文庫本を読み始めた。

今日のお供は西村賢太の『暗渠の宿』。すでに読んだことのある作品だけど、短編2作が収められた本なので待ち時間に読むのには丁度良いと思った。

病院という空間で西村賢太の作品を読んでみると不思議な感触がした。ぼくは病院に対してそこそこ神聖なイメージを抱いているんだけれども、「蔵書を売ってまで買淫し、あまつさえそこで『ありきたりな相思相愛の恋人』を得ようとする男の話」を読みふけっていると、何だか両者の聖と俗のイメージがぶつかり合い、せめぎ合い、仕舞いにはどこか背徳感のよなうなものさえ涌き起こって来た。皮膚科なのに。

 

テキトーな背徳感を甘受しつつ30ページほど読み進んだところで、思っていたよりも早く自分の名が呼ばれてしまった。今の今まで買淫男の話を読みふけっていた人間が、今度はそそくさと診察室に入り自分の顔にできたイボを医者に診てもらう。そんな生活のコントラストに頭がぼうっとしているうちにも、先生は気さくな笑顔でイボの原因を説明してくださり、じゅっじゅっと三度か四度、液体窒素で不細工なイボを焼いてくださった。何だか根が深いらしく、これで症状が改善されなければ再度来院して欲しいというよなことを言われた。イボの原因となっているらしいウィルスの名前、何だったけかなあ。液体窒素の感触を楽しんでいる間に聞き流してしまった。

 

下画像は昨年頭に某地の三省堂でもらったサイン。何度もTwitterなんかで自慢しているが、今日もしておこう。気の小さいぼくは直前に会場近くの居酒屋に入って、一杯か二杯、もしかすると三杯くらいは引っ掛けてからサイン会に臨んだ。そんな状態だったのに「がんばってください」としか言えなかった自分が恥ずかしい。

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いや、そもそも酒飲んでサイン貰いに行くって失礼だろ。