おかしなほしのはなし

とっ散らかっている。

正しい休みの過ごし方

けろりんぱ、というような心持ちである。

 

休日であるにも関わらず別段予定らしい予定はない。七時過ぎに目が覚めてそのまま携帯をいじりながらぼうっとし、八時半になってケーブルテレビで『ふるさと再生 日本の昔ばなし』を視聴。しかし内容は一切頭に入って来ず、気が付けば九時を回ろうとしていた。放送されていた題目が何だったかさえ覚えていない。

またしばらくぼうっとし、その後『安住紳一郎の日曜天国Podcast版を聴きながら休日の日課としている家計簿付けを実行。レシートに印字されたオールカタカナの品名とにらめっこしながら、ぽちぽちとExcelに数字を打ち込んでいく。先ほどよりも幾らか頭がクリアになったのか今度はぼんやりとPodcastの内容が頭に残る。TBSラジオのスタジオは赤坂だったか。何処かの密室から電波に乗って齎された他愛もない会話、その残滓が蕩けかけた脳みそにゆっくり沈着していく。

家計簿を付け終えるともう十二時になっている。単純に言って、すでに休日の半分が消化されてしまったわけだ。少しでも休日らしさを演出してみようかと外出する理由を探してみるが、どれも決め手に欠ける。休日が来るたびに浮き足立って、結局は何も手に付かないまま一日が終わるというのがこの頃の常となっていた。やっとのことで動きだしラーメンを茹でて食べる。この時点で十二時四十八分。

BSで『にっぽん縦断 こころ旅〜とうちゃこ〜』を途中から見始める。火野正平が自転車に乗って日本各地を回る番組。非常にユルく、安心して見ていられる。火野正平にはプレイボーイ特有の余裕を感じる。しかし一旦書いてみてから「いや待てよ、その余裕があったからこそ女性を惹き付け数々の浮き名を流したのでは」というような「鶏が先か卵が先か」的疑問が生じ、瞬く間にどうでもよくなった。

十三時。まだぐずぐずしている。ケーブルテレビで『CSI:科学捜査班 シーズン5』が始まった。CSIの中でもこのシリーズが一番好き。主任のグリッソムは勿論、メンバー一人一人に愛着を感じている。馬鹿みたいに口を半開きにして見ていると、遺体の胸部にメスを入れて胸の皮と脂肪を一気にめくり上げるシーンがあった。その後電動ノコギリのようなもので骨を切除。こういう演出に出くわすたび昔行った『人体の不思議展』のことを思い出す。幾つかの標本に触ったけれど「弾力性の強いゴム」というような感想しか持てなかった。

十三時半。このままでは折角の休日を駄目にしてしまうと思い、取り敢えず買い物にでも出掛けてみようかと考え欲しかったものを書き出してみる。

・ストーンウォッシュのジーンズ

・首から提げるタイプのカードホルダー

・葉書

Quick Japan vol.121

・レシートを収納できる大きさのジップロックのような容れ物

・小さいルーズリーフ

ステープラーの針

・赤い靴

・線香立て

絶対に手に入れておきたいものと、そうでないものとが混在している。ひとまず出掛ける口実にありついた気がして安堵するが、この調子では出掛けた先で愚図愚図と考え込み始め、結局は徒労に終わるのではないかと憂鬱になってきた。ここまで、いつも通り。

全身に纏わり付いた湿気を洗い落としたく、ざっとシャワーを浴びた。湿り気を払う為に水を浴びるとはこれ如何に。頭を洗おうと思った段になってやっと思い出したが、シャンプーが残り僅かになっていた。ポンプの頭をぐいぐいと連続して押下し、一思いに残りを全部使い切った。洗髪後、空になった容器へ水を入れ、ポンプで蓋をせずぶんぶん振り回してみた。こういう馬鹿げた遊びが大好きで仕方なく、白濁した水が方々へ飛び散るのを存分に楽しむことができた。容器も綺麗になり、詰め替え用のシャンプーを入れる段取りができたので一石二鳥。買い物リストに詰め替え用のシャンプーと、頭を洗っている最中に欲しかったことを思い出したWALL-EのチョロQみたいなおもちゃを追加。浴室から出て時計を確認してみると、恐ろしいことに十五時になっている。

出掛けるまで汗が引くの待ちながら絵を二つ描いた。

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十五時四十分になってようやく家を出た。ここ数週間のことを思うと驚くほど涼しい。家の近くの家電店前に人だかりができていて、何かと思うと店頭のテレビで高校野球を見ている様子だった。すでに決着がついているようで監督や選手が整列している。あとからネットで見てみると今日が決勝戦だったということがわかった。

駅へ向かうまでの間どこまで行こうか考えていたが、ケチ臭く通勤用の定期券で行ける範囲で済ませることにした。三駅離れた某駅まで向かい、駅近くの書店でまず『Quick Japan』を購入。こだまさん(Twitter@eshi_ko)のエッセイが目的だったが、目次に「いがらしみきお インタビュー」の文字列を見掛けさらに心躍った。勢いに乗って繁華街まで出てみようかとも考えたが、腕時計に目をやって思い止まった。乗り馴れた電車に再び乗車し、地元駅まで引き返す。帰りがけに葉書と煙草と、ステープラーの針、ジップロック、クリップ、ポテロングを買った。

家に着くなり焼酎をお茶で割って、ポテロングを肴に少し飲んだ。飲みながら先月分のレシートをクリップでまとめ、過去分と合わせてジップロックにしまった。十六時三十分。一時間も外に出ていなかったことになるが、それなりの満足感を得られた。

あっという間に一杯飲み終えてしまう。だいぶ陽は落ちたにも関わらず、外ではまだ蝉たちがジジジジっと夏を惜しんでいる。適度な雑音に耳を預けて、先日買った『good!アフタヌーン』にもう一度目を通し、向浦宏和さん(Twitter@mukoura00)の読み切り「りびんぐふぁ〜にちゃ〜 ー備品係の恋ー」を再読。「絵柄が好みだな(とくに女性キャラの目元)」と思っていたのだけれども、今作のシチュエーションは『家畜人ヤプー』にときめきを覚えるタイプの自分には好物と言わざるを得ないものだった(実際作中にも『家畜人ヤプー』の名が出て来る)。Twitterでの発言を見ていて向浦さんには「品のある人だなあ」という印象を抱いていた。こんな感想が失礼に当たらないかわからないが、「りびんぐふぁ〜にちゃ〜」を読んだ後もその印象は変わらなかった。のっけから変態的シチュエーション丸出しではあるのだけれども、どこか儚げな絵柄も作用してか胃にもたれ過ぎることがない。買って来た葉書にアンケートを貼り付け、余白に「月岡さん最高」と男子中学生みたいな感想を書き記した。

夕飯にはまだ早いので、続けて『Quick Japan』掲載のこだまさんのエッセイを読み始める。五月の文学フリマで手に入れた同人誌で初めてこだまさんのエッセイを読んでからというもの、すっかりファンになってしまった。今回の「私の守り神」もまた舌を巻いてしまう内容。こだまさんの文章からは「丁寧に生きているなあ」という印象を受ける。それでいて生活との距離感がどこかクールで、しかも話の随所に可笑しさ、滑稽さが盛り込まれているのだから恐ろしい。ぼけらっと人生を消費している自分には決して書けない代物だ。読み終えたくない葛藤と戦いつつもあっという間に読了。最近こだまさんの文章を読むときに「ハッカ油で煮込んだ豚肉のブロック」を思い浮かべてしまうのだけれども、万が一にもそのような料理は存在しないだろうからぼくはきっと疲れているのだと思う。

十九時十六分。Quick Japan』のほかの記事をぱらぱらめくっていると深見東州のライブレポートがうっかり目に飛び込んで来た。少し前にネットでライブ情報を目撃しずっともやもやしていたものが、思わぬ形で解決されてしまいそう。この人は本当に何者なんだ。知りたいような、べつにどうでもいいような、言い知れぬもやもやをとりあえず置いておき夕食を取ることにする。このまままた明日の労働を憂いて飲酒をし、あと二時間もすれば思考が蕩けてまたいつものようにTwitterで妄言を垂れ流し始めるだろう。買い忘れた詰め替え用シャンプーは家に買い置きがあったので事なきを得た。みっっともなくはあるが、そこそこの休日感を得られた一日であったように思う。

 

何と言うかこれは、けろりんぱ、というような心持ちである。

 

 

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