おかしなほしのはなし

とっ散らかっている。

断食か、さもなくば

休日。

日中から夜にかけて散々飲み食いした。飲み食いすることが目的の外出。十三時半頃に家を出て、移動時間を除けばほぼずっと飲み食いしていた。痩せ形だがそこそこ大食いなので、結構な量の食べ物飲み物が胃に流し込まれることとなった。何を食い何を飲んだか、正確なところについては記憶を辿ってみたくない。ここ半年ほど、自分の食欲を後ろめたく思う機会が増えた。

二十一時前に帰宅し、少し水を飲んで、いつの間にか眠ってしまう。で、今度は夜中に目を覚まし、水をコップに二杯飲んで頭の中を点検した。アルコールをいつもより多く摂取していたこともあり、帰宅するまでの数十分と、帰宅してから眠ってしまうまでの数十分分の記憶が怪しい。ディテールに綻びがあり、そのことがひどく心を引っ掻き回す。これはいつものことで、毎度のことながら自分の学習能力のなさは致命的であると思った。

その後ケーブルテレビで『攻殻機動隊』を視聴。珍しく土日続けての休みだから、この際久しぶりに夜更かししてやろうかという気になった。日付が変わり午前二時少し前。小腹が空きだして、ここに来てまた性懲りもなく食べ物のことを考え始める。半日かけて飲み食いしたものはこの腹の中のどこへ消えてしまったのだろう。冷蔵庫に軽井沢土産でもらった高級そうなサラミがあることを思い出す。ビールでも飲みながら齧ってみようかと思ったが、踏みとどまった。体に酒が残っているのは充分過ぎるほど感じられたし、夜中に「サラミ」という油っぽさの化身を腹に入れることに躊躇するくらいには歳をとっていた。

食欲。三大欲求の一つに数えられるだけはある。飯を食って腹が膨らんだとしても、数時間経てばまた腹が空く。何を食べたら満たされるのだろうと考え始めてみたが、当然適当な解は見付からない。食べたその瞬間は満たされたとしてもまた腹が減る。動物だの、植物だの、その死骸を口に運び続けない限りこっちが命を繋いでいけないのだ。生きているうちはこのサイクルが続くわけで、これはなかなかに地獄的だなと思った。取り留めのない考えを捏ねくり回しながらツイートした「食べたいものリスト」は以下の通り。

・焼肉

・ラーメン

・カレー

・ハンバーグ

・素麺

・餃子

・野菜炒め

・焼き鳥

・コロッケ

・おでん

・オムライス

・炒飯

・青椒肉絲

・ワンタン

・から揚げ

・お好み焼き

・シュークリーム

・蕎麦

・カレーうどん

・ポテトサラダ

・ペペロンチーノ

ナポリタン

・ミートソース

・ツナおにぎり

ねぎとろ巻き

・豆腐と油揚げの味噌汁

・納豆巻き

・チキンナゲット

・チーズバーガー

・チーズケーキ

・のり弁

・ベーコン

・目玉焼き

・マカロニサラダ

・サラミ

・ソーセージ

・冷奴

・麻婆豆腐

・アボカド

・ゆで卵

・山芋の千切り

・ジャーマンポテト

エンゼルパイ

・ピザまん

・ハムサンド

・コーンスープ

・オニオンスープ

・鮭茶漬け

・磯辺焼き

・アスパラベーコン

・シューマイ

ざっと見返してみるだけでも自分の偏食ぶりに舌を巻いてしまう。ガキっぽく、栄養価への配慮など微塵も感じさせないラインナップ。最後の晩餐がこの中のどれかになる確率は果たしてどれくらいになるのだろう。兎にも角にもあらためて箇条書きにしているうち胃がもたれ始め、夜中に涌き起こった食欲は一旦また腹の奥底へ封印される運びとなった。

午前五時。夜更かししたい欲求も満たされ、それと入れ替わるように柔らかな眠気も全身を覆い始めた。日曜の朝は『安住紳一郎の日曜天国』を聞かねばならない。珍妙な義務感のもと、この辺りを引き際として再び眠りにつくこととする。

私は馬鹿なので、間違いなく今夜ああだこうだと考えていたことなど忘却し、明日もきっと当然のことのように腹を空かす。せめて朝食は、食べたいものリストには挙らなかった、さっぱりしたものにしよう。