おかしなほしのはなし

とっ散らかっている。

秋のロサンゼルス

休日。

欲しいものがあったこと、何とはなしに家にいたくなかったこと、この二つが結び付いた結果、半分夢遊病患者のようにしてふらふらと外へ出る運びとなった。

 

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気が付いたらぼくはロサンゼルスにいた。欲しいものを効率よく手に入れるにはこの街が最適であったし、何よりぼくはこの街の持つ雰囲気が嫌いでなかった。人ごみが苦手なのに、なぜかこの街の雑踏は然程苦でない。ロス特有の洗練された空気がぼくの肺には馴染むのかもしれなかった。

 

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今回のお出かけは比較的目的がはっきりとしていた為心に余裕があった。道すがら川の水量を確認するなどし、濁った川面に自分の未来を見た気がした。然程風の強さは感じなかったのに水面が派手に波打っていたのが印象的だった。都会を流れる川の表情はいつだって不敵である。

 

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時折足を止めながらも、徐々に目的地へと距離を縮めていった。平日の真っ昼間ということもあり人出はそこそこ。しかしそうは言うものの、今や観光地としても名高いだけあって外国人買い物客の姿がかなりの数認められた。雑踏の中でも外国語を耳にする機会の方が多いくらいだったように思う。

 

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わりと頻繁にこの街を訪れているぼくでさえ、やはりこの街は「異常」だと思う場面が少なくない。まだオタク文化が芽吹く前のこの街には、今ほど赤や黄色や、ピンクや肌色といった色彩が置かれていなかった。この街は異常だと思うが、ぼくにはどこかその「異常」を歓迎しているような側面がある。

 

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まんだらけコンプレックスとCOMIC ZINで目的のものが買えたので、滞在時間三、四十分ほどで帰路についた。途中見慣れた光景と見慣れない光景を一つずつ目撃し、一丁前に時の流れを感じてしんみりするなどした。不思議なことに学生服やメイド服を着た客引きに声をかけられることはなかった。妙な疎外感が今でも胸にこびり付いている。

 

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しっかりと手に入れることができた欲しかったもの、二点。『コンバット・バイブル』の増補改訂版と『さつまいものおかし』。『さつまいものおかし』の方は以前まんだらけコンプレックスに行った時は出会えなかったので感激も一入。どうやら最後の一冊だったらしく、棚に置かれてあったサンプルの表示がある品がそのまま我がものとなった。

 

満足して家に戻り、一休みしたのち地元を徘徊して、結局はいつもの店でラーメンそのほか三品ほどを貪って今に至る。腹は膨れ、ほどほどに酔い、手元には欲しかった本が二冊もある。西村寿行の『君よ憤怒の河を渉れ』も今週中には読み終えてしまいそうだけれど、当分は読むものに困らなくて済む。次に読むものが控えているということ、これは結構しあわせで、うだうだと愚図る心をひとまずなだめすかすくらいの作用を秘めているのかもしれないと思った。