おかしなほしのはなし

とっ散らかっている。

みんみんが鳴く時間脳(冬が来た)

「あ、もしもし、ボルネオに生息しているアオエリアブラゼミさんとお話したいんですが」

「はい。ボルネオに生息しているアオエリアブラゼミですね。只今お取次ぎいたします。少々お待ちください」

 

ピロピ∞ピロピ

 

「お電話代わりました、ボルネオに生息しているアオエリアブラゼミです」

「あ、いきなりお電話してしまって申し訳ありません。私、×××という者で、今回是非ともアオエリアブラゼミさんの影響を受けたいと思った次第です。あなたはとても少し時間脳が気になっているかもしれないけれど、よりにもよってこの前の二時間くらいの居眠りマークは忘れる記憶です。あなたの気配を感じたならば、今夜のおかずは何がいいでしょうか?」

「ムッシュ!あなたはいささか錯乱なさっているようだ。私はただのボルネオに生息しているアオエリアブラゼミです。セプテンデキムのようにあなたの期待に応えることはできかねます。そよいで散ったヴィヨンの瞳に清濁併せ呑む覚悟を決めてください」

「あ、これは悲劇だ!私はそれこそ話題沸騰中の冷え性で、偽薬の香りに誘われて上京したボルボックスのようなものです。ディオニソスアブストラクトアートで一杯やりませんか?鈍才かつ貪婪で、オルガとマリーとドラに平手打ちを食らった潜在的アパシーとは私のことです。ハイブローのイデオロギーが過大コミュニティーにおける自己の紛失によって昇華されるのだとすれば、研ぎ澄まされたオタクの愛情はヘレン・フィッシャーによって打ち砕かれるでしょう」

「ムッシュ!あなたはマウナケア山頂に降り立ったカシオペヤAの輝きを静かに愛しているというわけですね。赤色巨星の憂鬱は途方もなく裏返るというわけか」

「あ、私はつまり遊び疲れた韜晦屋で、存在の図図しさに使い果たされ始めているといった具合です。グリムスボトン火山に眠る私の中長期的兄弟は神の首に両の手を添えたままで最後の言葉を待っています。しかしまた私の言葉遊びなどはディープブルーに常に二万手先まで読み解かれているに決まっていて、舌端火を吐くことすらままならないのです」

「ムッシュ!よしんば淵瀬の無常さに一度ほどいたマフラーを再び巻き直すようなことがあったとしても、私たちは神を殺すべきではなかったようです。権利とタイミングの問題がもっと俗っぽく一晩中死ぬんだ」

「あ、盗んだ名前をマズロー欲求段階説に当てはめてみるならば、バケツランの受粉の仕方なんかは思索の試作が実用化された良い例として正当に評価されるべきだ。チューリングとうり坊が交差する我々の商店街にジーン・ハックマンが素敵なブティックでも開いたのならそれなりの塩梅が期待できるのかもしれません」

「ムッシュ!噛み過ぎて味の失せたガムのサルベージが困難になった以上、善人も悪人も何かしらには正直であるのは確かなようです。結露した窓の向こうで塵埃にまみれた老犬がびょうびょうと咆哮して飢餓を告発しているのは腫れ上がった必然の致命的遺言状とでもいったところでしょうね」

「あ、それはどうにも釣り針に頬を裂かれるような話だ。始点と終点を欠いた曲線に円と名付けたように、超一流のドラマツルギーを用いて憂鬱を支払いながら生きる為に生きるのは模造したカタストロフの差異か災禍のどちらかでしょう。可視光線の泉の中、私は鼻の効かない犬のようになっていた」

「ムッシュ!どうやら私たちは大抵の屈辱に接近し過ぎたアウフーベンの残骸に成り果てた。情報の増大と合理化への志向は比例するとして、鈴生りの電灯を横目にエントロピーの海にしけ込んでみませんか?」

「あ、それではシェーンベルクの作品23を足掛かりに自由競争の原理で待ち合わせることにしましょう」

「ムッシュ!作用し作用され続ける側から言わせてもらえるのならば、それは名案だ。では、さよならです、ごきげんよう」

「ごきげんよう」

 

プツ∞ツー∞ツー