おかしなほしのはなし

とっ散らかっている。

ピンク・プディング

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ダメになってしまった神田の町に直径三百メートルほどの大穴が空いた。

大穴からのっそりと姿を現したのがママン。慈愛に満ちた瞳が母性を連想させるので、ぼくが勝手にそう呼んでいる。

ママンは瓦礫の山をがちゃがちゃと捏ねくり回していた。倒壊したビル。折れ曲がった道路標識。ドアやタイヤの外れた自動車。それらをまるでレゴか何かのように組み替えて遊んでいた。

「創造主にもこんな奔放な一面があったのだろうか」と、ふと思う。今のところママンは何一つ創造してくれそうな気配を見せていないが、今後の活躍に期待したい。

過鈍感症患者M

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Mさんが不安と養子縁組した。

生後三ヶ月ほどの不安を東池袋で拾って来たらしい。不安はMさんによく懐いていた。

Mさんはこれまでにも何匹かの不安を保護し、育て上げ、リリースして来たのだという。不安を育てることは最早彼のライフワークとなっているらしかった。

曰く「芥川龍之介はその道では素人」とのこと。

その道とはどんな道なのか、いつか詰問してやろうと心に決めている。

 

黄色くて大きいもの

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町にとらが現れた。

とらは人間を踏み潰してしまわないよう慎重に進路を選んだが、そのドでかい図体ではデリケートな歩行にも限界があった。

伸されていく人々の絶叫。とらは泣きながら歩みを進めたが、罪悪感に精神をやられてしまい、ついに神田で倒れた。

ずしんと轟音を立てて崩れ落ちるとらの巨体。神田一帯は瓦礫の山と化し、薄れゆく意識の中でとらは自分の運命を呪った。

仮面の隣人

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隣人が怪人で人参が凶刃だった。

「何人殺ったの?」と聞いてみると「この惑星ではまだ五千」と大変なことを言う。ほかの星にも殺人罪というものがあるのか知らないけれど、ぼくは兎に角「厄介なことになったな」と頭を抱えてしまった。

不穏な隣人の不穏な発言に気を病むなんてナンセンスだ。ましてや彼の存在に怯えて住み慣れた我が家を追われるなんて、あってはならない。